日本は自然が穏やかで、四季の変化に富んでいる

●日本の自然の穏やかさと四季の変化(紅葉・さくら)

●(秋)上の写真は、標高1102mの三峯神社(埼玉県秩父市)付近からみた紅葉(2014/10月末撮影)。

清少納言「枕草子」
このような風景を私は美しいと感じる。山も低いし雲もうすぼんやりしているが、雲はたなびき、手前の木々が冬を前に色づきはじめている(紅葉するという)。空と雲、山と紅葉それらの組み合わせが美しいと感じる。
●日本の良いところは、自然が穏やかで、四季の変化に富んでいることだ。
今から1000年前、清少納言は「枕草子(まくらのそうし)」という随筆を書いた。その美意識は、今なお日本人に共感を与えている。その最初の段のはじまりは次のようだ。
「春(はる)は曙(あけぼの)。やうやうしろくなり行(ゆく)、やまぎはすこしあかりて、むらさきだちたる雲(くも)のほそくたなびきたる。
夏はよる。月のころはさら也、闇もなを(ほ)、ほたるの多くとびちがひたる。又、たゞ一二(ひとつふたつ)など、ほのかにうちひかりて行(ゆく)もお(を)かし。雨などふるも、お(を)かし。
秋は夕(ゆふ)暮。夕日のさして山のはいとちかうなりたるに、からすの寝(ね)所へ行(ゆく)とて、三四(みつよつ)、二(ふたつ)みつなど、とびいそぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるが、いとちい(ひ)さくみゆるは、いとおかし。日入(いり)はてて、風(かぜ)の音むしの音(ね)などいとあはれなり。・・・・」
(出典)「枕草子」 (新 日本古典文学大系)岩波書店1991年刊より一部引用。
(参考)(英文訳Ivan Morris)
(In spring, it is the dawn that is most beautiful. As the light creeps over the hills, their outlines are dyed a faint red and wisps of purplish cloud trail over them.)

●日本人は自然を美しいものとみている。また自然に近いものを美しいと考えている。そして、うつろい過ぎ去っていくものに特別な美を感じている。そのような日本語の例をあげると、以下のようである。これらは他言語には翻訳できないのではないだろうか。

「うつろふ」「行く春」「暮の秋」「行く水」「花散る」「落葉」「雪あかり」「雪晴れ」「新雪」「ささめ雪」「はかない」「きれいさっぱりと」「いさぎよい」「サビ」「ワビ」「イキ」「シブイ」「風流」「きめ」「こく」「風味」など。
(出典)「日本語」金田一春彦著、岩波書店1988年刊より引用。

●このことは、日本の「自然」が、すぐ身近にあって手の届くところにあることが理由であると思う。日本人は豊かな自然にかこまれて、つねに四季折々の変化を感じて生活している。つまり日本人にとって、自然は敵対し征服するものではなく、共生しそして崇拝するものであったのかもしれない。

(秋)日本の紅葉(黄葉)の美しさ


●この写真は、同じ三峯神社の付近の写真だが、2015年11月撮影したもの。神社の建物と紅葉がよく似合う。

●ここで「紅葉」について書いてみる。まず語句の読み方は以下のようである。
●紅葉・黄葉・・・二つの語句とも、「もみじ」「こうよう」と、二通りに読む。
また「こうよう」するという言い方が普通だが、「もみいずる」「もみずる」と、「もみじ」を動詞として使うともある。
●そのことを、「俳句歳時記 秋」(1971年文藝春秋発行)から、季語(きご)のひとつとして引用してみる。日本の風景の良さとは別に、日本人の美しさに対する表現力のきめの細かさがわかる。

●紅葉(もみじ・もみぢ)
落葉樹は、晩秋の寒冷にあうと、紅葉(こうよう)したり黄葉(こうよう)したりして凋落(ちょうらく)する。紅葉(もみじ)とは元来、草木が霜にあって、赤または黄になることで、「もみいずる」・「もみずる」と動詞にも用いる。
ふつう紅葉(もみじ)と言えば楓(かえで)を言うが、その他の木にも言い、紅葉(もみじ)も黄葉(もみじ)も「もみじ」である。「色葉(いろは)」ともいう。
特に紅葉の美しい名の木には、下に紅葉(もみじ)をつけて、

漆紅葉(うるしもみじ)・櫨紅葉(はぜもみじ)・銀杏黄葉(いちょうもみじ)・白膠黄葉(ぬるでもみじ)・柏黄葉(かしわもみじ)・柿紅葉(かきもみじ)・梅紅葉(うめもみじ)・合歓紅葉(ねむもみじ)・満天星紅葉(どうだんもみじ)・葡萄紅葉(ぶどうもみじ)・白樺黄葉(しらかばもみじ)などと言い、名木紅葉(なのきもみじ)として一括している。

何の木と言うことなく、もろもろの木の紅葉を雑木紅葉(ぞうきもみじ)と言い、紅葉(こうよう)した草木の葉の美しく照り輝くのを「照葉(てりは)」と言う。

夕紅葉(ゆうもみじ=夕日に映える紅葉)・むら紅葉(むらもみじ=むらになっている紅葉)・下紅葉(したもみじ=下葉が紅葉すること)・谿紅葉(たにもみじ)・庭紅葉(にわもみじ)・紅葉川(もみじがわ)・紅葉山(もみじやま)

またものに喩(たと)えて、「紅葉の帳」「紅葉の淵」「紅葉の笠」などと言う。・・・・以下略

●そしてこれらの季語を使った俳句例が多数あげられている。数例を引用する。
○から掘の 中に道ある 照葉かな   (蕪村)
○大寺の 片戸さしけり 夕紅葉    (一茶)
○幕吹いて 伶人見ゆる 紅葉かな   (子規)
●そして楓(かえで)については以下のようにある。
●楓(かえで・かへで)
楓の類いは、その紅葉の美しさを称して、秋季とする。「もみじ」と言えば、紅葉・黄葉する一般の木の称であるとともに、とくに紅葉が美しい楓の異称でもある。葉は掌状に深裂するのが普通で、蛙の手に似るので古名「かえるで」と言う。種類が多いが、「高尾紅葉(もみじ)」はまた「高尾かえで」・「いろはかえで」とも言い、またこの木をとくに「もみじ」とも言う。・・・・後略
●言葉ではわからないので、葉の形がわかる写真をのせてみる。
○出典:「葉っぱで見わける・樹木ハンドブック」(池田書店2011年発行)と「身近な樹木ウオツチング」(淡交社2001年発行)
(紅葉・黄葉する樹木の一例)
●樹木名・写真(一部切り取り) 解説(一部抜粋) 出典
●イロハモミジ
カエデ科の落葉高木。別名イロハカエデ、タカオモミジ。本州以南の山地に自生。庭木として栽培される。kouyou001
「庭園などのモミジの黄葉はほとんどイロハモミジ」
黄葉はイチョウを筆頭に都会の樹木でも数多く見られるが、目にもあでやかな紅葉といえば、やはりカエデ類、ほかにはニシキギ(錦木)、ハゼノキ、ドウダンツツジなどで樹種はかぎられる。
カエデというのはイロハモミジ、イタヤカエデ、オオモミジ、トウカエデなどのカエデ属の総称。
郊外の山に行けば色とりどりのカエデの紅葉・黄葉が楽しめるが、都会の庭園なので紅葉するのは、ほとんどがイロハモミジ(イロハカエデ、タカオモミジともいう)である。気温によってはあまり紅葉しない年もある。
「身近な樹木ウオツチング」
●イロハモミジ
カエデ科カエデ属。別名イロハカエデ、タカオモミジ。kouyou006
 イロハモミジは、紅葉した葉が美しく「モミジ」というとふつう本種のことをさす。山地のやや湿り気のある日あたりのよい沢沿いや斜面に生える落葉高木で、庭木や公園樹、盆栽などとして植えられる。名前の由来は、葉の分裂を「いろはにほへと・・・」と数えたことによるといわれる。オオモミジ、ヤマモミジは分裂した部分が太く、鋸歯のちがいで区別できる。irohamomiji 「葉っぱで見わける・樹木ハンドブック」
●イチョウ(銀杏・公孫樹)
イチョウ科の落葉高木。一属一種。中国にわずかに残存していたものが、観音信仰とともに、僧侶によって日本にもたらされたものともいう。街路樹として、また社寺境内や庭園によく植えられる。kouyou003
「ユニークな葉の形。種子はギンナン」
 東京の街路樹のうち、数の上でのナンバーワンはイチョウ。
神社やお寺の境内にもよく植えられ、東京都のシンボルマークにもデザインされているから、知らない人はまずいない。末広がりの扇形の葉が特徴で、秋の黄葉の美しさでも筆頭格の樹木である。
 雄株と雌株があり、雌株に結ぶ種子がギンナン(銀杏)である。小石川植物園には、1896年、平瀬作五郎博士が精子を発見したことで有名な大イチョウが、現在も元気に育っている。
 幼樹のうちに雌雄を見分けることは困難。先が割れた葉と割れていない葉の木があり、これをズボンとスカートに見立てて、割れたものが雄株、割れていないものが雌株と区別している人がいるが、それは間違いである。
老樹になると幹から乳房のような突起が垂れ下がることがあり、これを乳イチョウと呼ぶ。ヨーロッパでは生きた化石として珍重される。学名のGinkgoは銀杏の字音を誤って記したからだという。
「身近な樹木ウオツチング」
●イチョウ(銀杏)
イチョウ科イチョウ属。別名ギンキョウityou
イチョウは公害にも強く、よく街路樹や公園樹などに植えられ、大きいものでは高さ30mにもなる落葉高木。寺社の御神木などでは樹齢数百年の巨木もある。中生代のジュラ紀(約2億1千万年前)に栄えた種で、現在ではイチョウだけが知られる。
 雌株は、秋に種子である銀杏(ぎんなん)を実らせる。種子は土に埋めてまわりを腐らせて除き、炒るなどして食用にする。
「葉っぱで見わける・樹木ハンドブック」
●トウカエデ
カエデ科カエデ属。kouyou008
 トウカエデは大気汚染に強いので、街路樹として多く利用される落葉高木で、紅葉や黄葉した様子がとても美しく、街路樹のほか、公園樹、庭園樹などとして植えられる。日本に入ってきたのは享保年間(1716~1736)といわれる。材は建築材などに利用される。樹皮は短冊のようになってはがれる。葉の切れ込みや鋸歯には個体差がある。toukaede 「葉っぱで見わける・樹木ハンドブック」

(春)日本の桜(さくら)の美しさ

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上の写真は、埼玉県指定天然記念物で樹齢約600年といわれる「青雲寺のサクラ」で、エドヒガン系のシダレザクラである。(2015/04/02撮影)
●下は、2015年撮影のサクラ。名所に行かなくてもどこにでもいっせいに咲きほこる。

●桜は毎年関東では、3月~4月上旬にいっせいに咲き、いっせいに散る。このことから日本では多くの歌が作られ、特に「軍歌」では日本人の「潔さと哀愁」を象徴しているものが多い。また現代においても、人気グループAKB48が2010年に「桜の栞(しおり)」を発表している。

●一例「同期の桜」
(ボリュームスライダーを調整してから再生して下さい)

(出典:(音声)YouTube「同期の桜」から)
●AKB48「桜の栞(しおり)」

「桜の栞(しおり)」AKB48「YouTube AKB48[公式]

●基本的な「サクラ(桜)」について述べると、以下のようだ。

①日本の国花で、古くは「花」といえばサクラを指した。
②サクラの品種は多く、自生種だけで100種以上、園芸品種は300以上になるいう。
③バラ科サクラ属の落葉高木または低木で、開花順に「エドヒガン」「ソメイヨシノ」「ヤマザクラ」「オオシマザクラ」「サトザクラ(ヤエザクラ)」などが有名。
④桜の名所として、平安時代の昔から奈良県の吉野町が有名。ここは「ヤマザクラ」が中心。「ソメイ・ヨシノ」と名づけたのも、日本人がこの地「吉野」のサクラを憧憬していたことによるのだろう。
⑤日本が寄贈したアメリカのワシントンのサクラは、2回目の(1910年)の時、ソメイヨシノ、カンザンなどの12品種だった。カンザンはサトザクラ(ヤエザクラ)の品種。アメリカの返礼は「ハナミズキ」(アメリカで最も愛される木のひとつ)だった。

●特に園芸品種「ソメイヨシノ」は有名で、もともとの自生種(野生種)ではない。よく知られている事をまとめると以下のようだ。
●ソメイヨシノとカワヅザクラ等
自生種 由来 新品種 備考
オオシマザクラ
(大島桜)
伊豆諸島の大島で多く産出したことによる。 ソメイヨシノ
(染井吉野)
この左の2種が交雑して実を結び、種子ができ発芽した。最初はただ1本の母木。
江戸染井村(現在の豊島区駒込)の植木屋さんが、新品種として苗木(なえぎ)を作り売り出した。(江戸時代末頃)「ソメイヨシノ」という木は、全て最初の1本の母木のクローンであるという。だからすべてのソメイヨシノが一斉に咲き一斉に花を散らす理由である。
エドヒガン
(江戸彼岸)
春の彼岸の頃(春分の日・3月21日頃)に花を咲かせた。
カンヒザクラ
(寒緋桜)
中国原産であるが、沖縄などで野生化している。 カワヅザクラ
(河津桜)この左の2種が交雑して実を結び発芽した。
伊豆半島で発芽し、伊豆河津町の方が山で発見し、植えたものが母木となった。(1955年頃)
オオシマザクラ
(大島桜)
上と同じ
●シダレザクラ
自生種 同じ品種 備考
エドヒガン
(江戸彼岸)
●ベニシダレ
●ヤエシダレ
●ヤエベニシダレ
これらは、エドヒガンの枝垂れ性の形質を持つもので、劣勢遺伝のため1対3の割合で出現するという。この枝垂れ性は、森の中では不利となり成長できないので、人間が見つけて移植したために生き残ったと書かれている。(大人の樹木学)
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